「コミット」という言葉は最近のビジネスシーンではよく使われますが、通常のビジネス用語よりは慎重に使うべき言葉ですね。
それは通常のビジネス用語と比べたら、その言葉を使うときには自分の意志になり、一定の責任を伴うからです。
「コミット」という言葉は、相手には好印象を与え、結果を出せたら信頼されますが、結果が出なかったら不信感につながるという、リスクある言葉になります。
今回はビジネス用語の中でも、慎重に使うべき言葉である「コミット」を解説したいと思います。
内容は、「コミット」の意味、正しい使い方の例文、似ている言葉・間違いやすい言葉になります。
ビジネス用語「コミット」の意味とは?
「コミット(commit)」は英語で、『コミットメント(commitment):名詞』の動詞になります。
英語としての本来の意味は、“委託する”“引き渡す”“付託する”“引き受ける”“約束する”などになっています。
日本のビジネス用語として使われる「コミット」は、一般的なビジネス用語とIT用語の使い方で、その意味合いが少し違っています。
一般的なビジネス用語としては、『結果を約束する』『積極的に関わる』などの意味になり、IT用語としては『処理を確定させる』の意味で使われています。
まずは一般的なビジネス用語としての「コミット」を解説しましょう。
ここでの「コミット」は通常の“約束する”とか“関わる”とは違い、『結果を約束する』とか『積極的に関わる』という意味になります。
つまりそこには、その言葉を使った人が責任を持って行なうという、通常の意味よりは強い意志が働いていると思わないといけませんね。
本来の英語の意味では、重い責任を伴う言葉ですので、相手は通常よりは使った人の積極的な姿勢や責任感を感じます。
100%確約までの意味とは取らなくても、最大限の努力はしてくれることを期待します。
したがって、この「コミット」を使う場合には、それなりの心構えが必要です。
また外交や政治の分野では、「コミットメント」という言葉がよく使われます。
この場合は、外交的には『公約』とか『確約』の意味で、政治的には『関与』という意味で使われています。
IT業界で使われる「コミット」の意味とは?
IT業界で使われる「コミット」は、一般的なビジネス用語の「コミット」とは、別の意味合いで使われています。
IT業界での「コミット」の意味は、データベースの更新・変更、修復などを一括処理するトランザクション処理が、すべて正常に完了した結果の『処理を確定させる』ことです。
トランザクション処理のことを、もう少し説明します。
データベースの更新・変更や、システム障害の修復などで行なわれる処理のことを、トランザクション処理と言います。
これは直接的な要因のデータ処理だけでなく、関連する複数のデータ上の処理も、一括してまとめて処理し完了させることです。
直接的な要因だけでなく、関連する複数のデータ処理を行なわないと、そのデータの整合性が失われる場合に行なわれます。
例えば銀行の入出金システムでは、口座間の出金と入金の両方の処理が正常に行なわれなかった場合には、データの整合性が保たれないため、この入出金処理は実行されません。
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「コミット」の正しい使い方を例文で解説
ここからは、「コミット」の正しい使い方を例文付きで解説していきます。
今回は、以下の2つのシチュエーションを想定して、「コミット」の使い方を紹介していきます。
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「結果を出すことを約束する」という意味で使われるコミット
ここでの「コミット」の意味は、言い換えれば、“私はこの課題を成し遂げますので期待してください!”と言っていることになります。
これは、受動的に仕事を受け入れるのではなく、自らの意志で能動的に仕事を行なうことを表明することになります。
シチュエーション
コミット?えーと、どういう意味だっけ?
わかりやすい意味に変換
来期の売上で『結果を出すことを約束します』!
了解!頑張ってね。
使い方の解説
「コミット」した場合と、“頑張ります!”とか“努力します!”と言った場合とでは、結果への期待値はかなり違ってきます。
それは頑張るとか努力の場合は、たとえ結果が出なくても、その取組み姿勢が評価されれば、責任はそれほど追及されません。
しかし「コミット」した場合は、自分がどれだけ頑張ろうが努力しようが、結果が出なければ責任を問われることになります。
したがって、何らかの機会で「コミット」する場合は、その内容に自信があったり勝算がある場合に使うのが賢明ですね。
「積極的に関わる」という意味で使われるコミット
ここでの「コミット」は、ただ単にメンバーとして参加するという意味ではなく、責任を持ってプロジェクトに加わるという意味です。
したがって、その仕事の内容には積極的な行動や発言が要求されます。
もしその時の自分に、必要な能力や時間的な余力がないと判断した場合には、ここでの「コミット」は単なる参加依頼ではありませんので、理由を説明し丁重にお断りすべきです。
シチュエーション
あなたも次のプロジェクトに『コミットしてください』!
コミットってどういう意味だっけ?
わかりやすい意味に変換
あなたも次のプロジェクトに『積極的に関わってください』!
承知しました!全力で取り組ませていただきます。
使い方の解説
ここでの「コミット」は、自分の意思で関わる場合と、人から言われて関わる場合の2つのパターンが考えられます。
自分の意志で関わる場合は、事前に内容も把握し、気持ちの準備もできていると思います。
しかし上記のように人から依頼された場合には、自分が「コミット」すべき内容の仕事なのかを確認すべきですね。
場合によっては、プロジェクトリーダー的な立場になることもありますので、心して返事してください。
「コミット」と似ている言葉・間違いやすい言葉
「コミット」は慎重に使うべき言葉ですので、関連する言葉もきちんと把握しておく必要があります。
ここでは「コミット」に似ている言葉や間違いやすい言葉を紹介しますので、その違いをよく理解しておいてください。
「コミット」と「プロミス(promise)」の違いとは?
「コミット」と「プロミス」にはどちらも『約束する』という意味があります。
しかし同じ約束の意味でも、自分の“意志・意思”の入り度合いと、責任の重さが違ってきます。
「コミット」は自分の意志が入った積極的な約束であるのに対し、「プロミス」は自分の意思ではなくても約束しなければならない場合もあります。
例えば、“今月の売上を達成します!”という約束は「コミット」になりますが、あまり乗り気でない“行楽に参加します!”という約束は「プロミス」になります。
また、「コミット」には結果に責任を持つという意味があり、約束が果たせなかった場合には、「コミット」した相手への謝罪が必要になります。
「プロミス」でも約束を守れなかった場合には、それなりの謝罪をするのが常識ですが、それほど責任は追求されません。
「コミット」と「プロミス」の使い分けとしては、基本は「仕事」と「プライベート」で分けましょう。
「コミット」は仕事上の上司や同僚や取引先との会話で使い、「プロミス」は家族や友人などとの間で使うべきですね。
「コミット」と「オミット(omit)」の違いとは?
「コミット」とよく似た発音で「オミット」という言葉があります。
「コミット」は『結果を約束する』『積極的に関わる』などの意味になりますが、「オミット」は『除外する』『省く』などの意味です。
使い方としては、“今度の会議の資料として3ページ目は関係ないからオミットします”、また“今回のコンペでは我社は残念ながらオミットされました”などです。
「オミット」は最近の一般的なビジネスシーンではあまり使われませんが、IT業界や映画・TVの撮影、また音楽の世界では使われていますね。
映画・TVの撮影では、一通り撮影した映像や音声を、編集の段階で切り取ったり削除したりすることですが、最近では「カット」と言うのが一般的みたいです。
また音楽の世界での「オミット」は、組合わせたコード音の中から、“ある音を抜いたコード音”のことで、「オミットコード」と言われています。
「コミット」と「フルコミット」の違いとは?
「コミット」は「プロミス」よりも強い表現ですが、「フルコミット」はその「コミット」よりもさらに強い表現になります。
その意味は、“最大限の努力をする”“全力で取組む”“責任を持って行なう”であり、約束を果たせなかった場合には責任を問われることになります。
したがって「フルコミット」は、そう軽々と使える言葉ではなく、自ら使う場合でも相手から要請されたとしても、熟慮して使うべき言葉です。
ビジネス上で「フルコミット」という言葉を使う場合は、約束するにしても、関わる仕事であっても、その責任範囲を事前に確認しておく必要があります。
その約束することは何なのか?関わる仕事にはどこまで関わるのか?などです。
そうしないと、約束が果たせなかった場合、自分が関わっていないことまで含めた全責任を取らされるリスクがありますね。
「コミット」と「デコミット」の違いとは?
「デコミット」は、「コミット」した約束を守れなかった場合のことを意味します。
この場合は、自分の意志で「コミット」したことを果たせなかったのですから、上司や同僚の信頼度は低下します。
「デコミット」になった場合にやるべきことは、責任を取って担当をやめるとか辞職するとかの、逃げることではありません。
たとえ相手から文句を言われても、問題を解決させるまで最後までやり抜くことが、責任を取ることになります。
会社には借りを作りますが、そうすることで自分のスキルを向上させ、後の仕事で会社に貢献して借りを返しましょう。
有能なビジネスマンは、自分で「コミット」した仕事が「デコミット」しそうになったら、普通は『アジャスト』しますね。
『アジャスト』とは物事を調整するという意味で、「コミット」した内容や日程などを相手と途中調整することです。
「コミット」と「コミットメントライン」の違いとは?
「コミットメントライン(commitment line)」とは金融業界で使われる言葉で、日本語では『銀行融資枠』になります。
企業と銀行間で、事前に融資限度額・返済期間・金利などを設定し、その範囲内であれば融資が約束されている契約のことです。
企業側としては、運転資金の確保や不測の事態への対応などのメリットがあります。
また、融資枠内であれば審査のための書類提出の必要もなく、資金調達としては効率的な方法になります。
「コミットメントライン」では、通常の金利とは別に、『コミットメントフィー又はファシリティフィー』と呼ばれる手数料を取られます。
この手数料は、まだ融資が行われていない枠に対して一定率を掛けた手数料になります。
コミットの意味と使い方まとめ
「コミット」は、自分の気持ちとして、ある程度の自信がないと使えない言葉です。
仕事において「コミット」することは、その仕事における取組姿勢と責任を、ある意味で『宣言』することに近いものがあります。
そして有能なビジネスマンは、自ら「コミット」することで、そのリスクやプレッシャーをクリアーできるチャンスとして活かし、確実にスキルアップしていきます。
⇒もっとビジネス用語を知りたいという方向けにビジネス用語が学べるおすすめの本5選を紹介しています。
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