「コンセプト(concept)」という言葉は、日常生活ではあまり使いませんが、近年のビジネスシーンではよく使う言葉になりました。
特に「コンセプト○○」という言葉がビジネス用語として増加し、少し整理して頭の中に入れておくべき時期になってきていると思います。
今回は何気なく使っている「コンセプト」の意味を、正しい使い方やその派生語も含めて、少し詳しく解説したいと思います。
「コンセプト」の意味とは?
まずは一般的に使われている「コンセプト(concept)」の意味を説明しましょう。
一般的な「コンセプト」は、日本語で「概念」「観念」「意図」などと訳されています。
もう少しわかりやすく、“物事の大まかな考え方”や“基本となっている思想”などと言い換えると、理解していただけるでしょうか?
人は他の人の生き方に共感すると、友人や恋人になったりしますね。
それと同様に、対象が商品やサービスやショップや企業の場合は、それらの持っているコンセプトに共感すると支持者になります。
では次に、ビジネスシーンで使われる「コンセプト」の意味を解説します。
ここで言う「コンセプト」の意味は、以下の2つに分けて考えたほうが理解しやすいと思います。
▽「コンセプト」の2つの意味
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①基本的な方向性という意味のコンセプト
これは企業の骨子となる考え方であり、企業経営の中心である経営層が発案すべきコンセプトになります。
いわゆる企業戦略と言われるもので、具体的なものとしては長期経営計画、構造改革、新規事業計画などになります。
したがって、このコンセプトの内容には、現状分析、外部環境変化、企業経営予測などの理論的な根拠がないといけませんね。
②基本的な考え方という意味のコンセプト
これは企業トップの基本的な方向性を受けて、管理職から一般社員が具体的に実行すべき戦術になります。
このコンセプトは“あるべき論”ではなくて、実現可能な能力を実行者が保持しているということが前提です。
このコンセプトを、ビジネス現場のシーンとして、もう少し具体的に解説しましょう。
日本のマーケットはすでに成熟し、今後は衰退が予想されることから、各企業は競合他社との「差別化」によって生き残ろうとしています。
以前の「差別化」は、対象が価格や機能や品質でしたが、近年の差別化は「個性の差別化」が重要であり、ますますコンセプトの重要性が増加してきています。
ですので、「事業コンセプト」「商品コンセプト」「広告コンセプト」「マーケティングコンセプト」など、目的に応じ多様なコンセプトが作成されています。
実務的には、事前に「コンセプトリサーチ」を行ない「コンセプトワーク」で検討した上で、具体的な「コンセプト」を作成していきます。
*コンセプトリサーチ:コンセプトを検討する前の事前調査
*コンセプトワーク:コンセプトを具体的に決めていく作業
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「コンセプト」の正しい使い方を例文で解説
ここからは、「コンセプト」の正しい使い方を例文付きで解説していきます。
今回は、以下の2つのシチュエーションを想定して、「コンセプト」の使い方を紹介していきます。
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①「基本的な方向性」という意味で使われるコンセプト
このコンセプトの内容は、担当役員決裁又は取締役会決議で決めるような重要事項になります。
基本的な流れとしては、まずは経営層がそのコンセプト作りの適任者に、基本的な方向性を説明し作成の指示を出します。
リーダーが中心になりプロジェクトを組み、基本的な方向性をベースに素案を作成しますが、その段階での担当者間の会話と想定してください。
シチュエーション
コンセプト?いまいち、意味がわからないのだが・・・。
わかりやすい意味に変換
今度の新規事業の『基本的な方向性』はこれにしよう!
確かに顧客のことを最優先に考えることは大事ですね。
使い方の解説
ここで使われるコンセプトの意味は、一担当者のタスクレベルのコンセプトではなく、その企業の将来を左右するような重要性の高いものです。
したがって、事前の「コンセプトリサーチ」やその後の「コンセプトワーク」を実施しながら、時間をかけてメンバー間の慎重な検討が行なわれます。
プロジェクトリーダーは適切な時期に担当役員と内容のすり合わせを行ない、取締役会の付議事項として最終的なプレゼンの準備を進めていきます。
②「基本的な考え」という意味で使われるコンセプト
「基本的な方向性」によってコンセプトが決定されると、それを具現化するための実務的なコンセプトの作成指示が、各部署やチームや個人に出されます。
それぞれの部署やチームや個人は、基本的な方向性のコンセプトをベースにして、担当役割の中でいかに貢献していくかのコンセプトを作成していきます。
ここでは、そのチームメンバー間の、コンセプト作成シーンでの会話と捉えてください。
シチュエーション
僕たちのチームの『コンセプト』は利益至上主義にするべきだ。
コンセプト?どういう意味だっけ?
わかりやすい意味に変換
僕たちのチームの『基本的な考え』は利益至上主義にするべきだ。
ビジネスである以上、まずは利益を重視するのは当たり前だね。
使い方の解説
「基本的な方向性」のコンセプトは、発展的でチャレンジ性が高くなるのが一般的で、実現の可能性が低くなりがちです。
逆に、現場レベルの実務的なコンセプト作りになってくると、難易度を低く設定し実現の可能性が高いものになりがちですね。
ここで注意しなければならないのは、「基本的な方向性」のコンセプトと「基本的な考え方」のコンセプトとが、しっかり連動しているかです。
お互いのコンセプト間で内容の矛盾はないのか、また「基本的な考え方」のコンセプトが実現することで、「基本的な方向性」のコンセプトが成就するようになっているのかです。
「コンセプト」と似ている言葉・間違いやすい言葉
一般的な「コンセプト」の意味としての和訳は、「概念」「観念」「意図」などになります。
しかし、現在のビジネス用語として使われている「コンセプト」の意味は、このような曖昧なものではありません。
もっと現実的で実務的な意味合いが濃く、「理念・思想」「構想・構図」「企画・計画」「戦略・戦術」などと置き換えた方が適切だと思います。
一方、「コンセプト」と間違いやすい言葉に「テーマ」がありますね。
この違いを一言でいうと、「テーマ」はイメージするべきものであり、「コンセプト」は理解し行動するべきものです。
以下ではその違いを、もう少し詳しく解説したいと思います。
「コンセプト」と「テーマ」の違い
何らかの行動を起こすとき、その基本的な方向性や考え方の指針を「コンセプト」とするならば、その全体像を一言で表現したのが「テーマ」だと言えます。
たとえば、今度の店舗のテーマは「オールディーズ(Oldies)」だとすると、その店舗の内外装のコンセプトは「1950年代のサーファーショップ」となるわけです。
つまり、「テーマ」は頭の中のイメージに漠然と訴えるのに対して、「コンセプト」はその「テーマ」をより具体的に絞り込んで訴えていきます。
別の言い方をすれば、「コンセプト」は相手に対してダイレクトに訴えますが、「テーマ」は全体的な雰囲気やデイティールで訴えてくるものです。
また「コンセプト」と「テーマ」は、相手に訴求するツールとしても使い分けられています。
たとえば「コンセプト」はクライアントへのプレゼンで重要な役割を果たしたり、ユーザーへの製品カタログの説明文の中で活かされたりします。
一方「テーマ」は、パッケージのキャッチコピーや店頭ポスター・Web画面などで、ユーザーに対するイメージ戦略として訴求していきます。
「コンセプト」の派生語
現代は物が溢れ、これからは「モノ(物)」だけではなく「コト(事)」の時代になり、さらには「モノ+コト」の時代になってきています。
今はその「コト」や「モノ+コト」の需要が飛躍的に増加し、さらに派生していかないと、ユーザーの欲求を満たせなくなってきています。
「モノ」であろうと「コト」であろうと、これからの多様化するユーザーの欲求を分析し、一歩先の提案をするために、「コンセプト」は重要な役割を担っています。
ここではユーザーの欲求に応じて、時代の必要性から生まれた、「コンセプト」の代表的な派生語を解説します。
「コンセプトカフェ」の意味とは?
一般的な「カフェ」は休憩や飲食、また打合せなどの場所として使われています。
しかし1990年代に入ると、イベントや即売会などでの販促用として、期間限定の「コスプレカフェ」が生まれてきました。
それが2000年代になると、コスプレと癒しの空間を売りとした、常設的な「メイドカフェ」へと派生していきます。
それ以降、コスチュームだけではなく何かに特化し、こだわりの癒し空間を提供する「コンセプトカフェ」へと進化しています。
一般的な「カフェ」と差別化するため、特定のコンセプトに基づいた内外装の仕上げと運用ルールにこだわり、独特の雰囲気づくりを行なっています。
つまり現在では、「カフェ」に何らかの“癒しの空間”を価値としてプラスしたのが、「コンセプトカフェ」と言ってもいいでしょう。
「コンセプトカフェ」はターゲットを絞って深く訴求してくため、その切り口は無限にあり、現在ではあらゆるジャンルに及んでいます。
その切り口の一部を紹介すると、動物系では「猫・うさぎ・金魚・ふくろう」などがあり、趣味系では「書籍・文具・プラネタリウム・おもちゃ」などがあります。
また、キャラクター系では「ガンダム・ムーミン・アリス」などがあり、変わり種としては「落語・お寺」など、まだまだ増加しそうな勢いですね。
「コンセプトアート」の意味とは?
「コンセプトアート」を日本語に言い換えると、“イラストなどで視覚化された「構想画」「青写真」「設計図」”と言えばイメージしてもらえるでしょうか?
その目的は、作品の完成形を関係者が共有化するためのツールとして使用しますので、芸術を追求する一般的アート作品とは趣旨が異なります。
具体的なビジネスシーンとしては、アニメ・映画・ゲームなどの企画段階や、建築物・都市設計などのコンペなどでよく使われます。
「コンセプトアート」は「コンセプトデザイン」とも言われますが、その発祥はアニメ産業やコンセプトカーのデザインなどから生まれたと言われています。
アメリカでは1930年代に、ディズニー・アニメで「コンセプアート」の言葉が使用されていました。
そして現在の日本には、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」を作り上げた優秀なコンセプトアーティストたちがいます。
特に最近のアニメ・映画・ゲーム業界では、最先端の技術を駆使して作品が制作されるようになりました。
それに伴い、制作に関わる人の分業・専門化が進み、「コンセプトアート」は完成形の共有のため、企画段階では不可欠のツールになっています。
「コンセプトカー」の意味とは?
「コンセプトカー」は、自動車メーカーの将来のコンセプトをデモ車として市場に提案し、その反応で今後のデザインや技術の指針とする車のことです。
「コンセプトカー」という言葉が定着するまでは、北アメリカで「ドリームカー」、「フューチャーカー」、「ハローモデル」などと呼ばれていました。
一般的には、国内・海外のモーターショーで展示されたり、メーカー系列販売店でショールームに展示されます。
「コンセプトカー」は、将来のデザインや技術・性能をユーザーにアピールするものであり、基本的にはそのまま市販されるものではありません。
一部、ほぼそのままの状態で直後に市販されるものも見られますが、その場合の「コンセプトカー」は先行販促としての役割を担っています。
一般的には、展示した「コンセプトカー」の市場の反応を分析し、近い将来に量産し市販する車の、デザインや技術・性能のモデルチェンジに活かされます。
「コンセプトカー」はある意味で、自動車メーカーの小売業におけるアンテナショップ的な役割を果たしているのかもしれませんね。
まとめ
製品であろうと、技術であろうと、サービスであろうと、コンセプトがしっかり構築されたものは、ユーザーの長期的な支持を受けます。
たとえそれが時代に合わせて変革していっても、基本的なコンセプトから外れていなければ、時代に取り残されることはないでしょう。
ビジネス現場でも同様に、短期であろうと長期であろうと、自分のビジネススタイルのコンセプトをしっかりと構築する必要があります。
ビジネススタイルのコンセプトが、時や場合や人によってぶれる人は、仲間からは信頼されませんし、上司からも信用されませんね。
⇒もっとビジネス用語を知りたいという方向けにビジネス用語が学べるおすすめの本5選を紹介しています。
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