取引先の担当者や会社の仲間との会話で、「うちの会社はトップダウンだから」という言葉を聞いたことがありませんか?
その場では軽く聞き流していても、その言葉は意外に曖昧な意味合いで使われています。
ここでは「トップダウン」という言葉の意味や、正しい使い方を解説し、後にメリット・デメリットなども紹介します。
「トップダウン」に関連する言葉としては、「ボトムアップ」や「ミドルアップダウン・マネジメント」や「ワンマン経営」などがありますね。
これらの言葉も「トップダウン」と関連して解説しますので、より理解を深めていただきたいと思います。
目次
「トップダウン(top-down)」の意味とは?
「トップダウン」とは企業経営の手法の一つであり、日本語としては「上意下達」と言われています。
企業の経営者や経営幹部の下した判断を、的確に下部組織に伝達し、その指示に基づいて従業員が迅速に行動する経営手法になります。
したがって「トップダウン方式」の経営手法は、大前提として、その判断内容が正しく、判断を下すタイミングが適切でないといけません。
一般的に「トップダウン方式」の経営手法が取られるのは、少人数の規模の企業に多く見られます。
大規模の企業でも見られますが、その場合は経営者に創業者一族がいたり、カリスマ社長が一代で企業を急成長させた場合に多く見られます。
また企業の置かれている環境で、一時的に「トップダウン方式」の経営手法を取る場合もあります。
たとえば、その企業が財政面や営業面で急激な危機に陥った場合です。
また急激ではなくても、企業力が長期的な衰退を続けている場合や、将来に向けての重大な構造的問題がある場合にも、有効な経営手法になります。
逆に、健全に安定成長を続けている企業では、有能な中間管理職が揃っているという前提で、「トップダウン方式」の経営手法は必要ないかもしれません。
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「トップダウン」の正しい使い方を例文で解説
ここからは、「トップダウン」の正しい使い方を例文付きで解説していきます。
今回は、以下の2つのシチュエーションを想定して、「トップダウン」の使い方を紹介していきます。
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①「上長から指示される」という意味で使われるトップダウン
ここで言うところの上長とは、直属の上司やそのまた上の上司の場合もあります。
さらに時と場合によっては、企業トップからダイレクトに指示される場合があります。
「トップダウン」の内容は様々ですが、一般的にはルーティンワーク的な仕事ではない場合が多く見られます。
したがって指示する上長は、その仕事の「目的と内容」「期待する成果」「達成期限」などを明確にしなければなりません。
「トップダウン」では上長がその仕事の戦略を示し、指示を受けた本人が具体的な戦術でそれを実行する形式になります。
シチュエーション
トップダウン?つまり、どういう意味だ・・・?
わかりやすい意味に変換
弊社の場合、新入社員は『上長から指示されるかたち』で仕事を任されます。
なるほど。上司が率先してリーダーシップを取る職場なのか!
使い方の解説
「トップダウン」の指示内容はきちんと理解・把握してから返事をしましょう。
上長の指示だからと言って、何でも「はい!」と返事していると、その仕事が上長の期待通りでないと信頼を失います。
自分の能力を超える内容であれば、上長と相談し仕事内容を事前に調整しておくべきです。
また、その仕事の重要度・優先順位なども、確認しておくべきですね。
日常のルーティンワークを一時的に中断してでも、その仕事を優先させるべき重要性の高い事項なのか。
急いではいないけど、1ヶ月先までに仕事の合間を見て完了すべき仕事なのかです。
②「上層部に決定権がある」という意味で使われるトップダウン
ここで言う「決定権」とは、指示命令の判断を誰がするかという意味です。
組織においては物事の決定者は1人であり、複数いては現場が混乱し効率が悪くなります。
その意味で、指示命令の判断(決定権)は、ここでは上長にあります。
上長から指示された時点で、やるべきことの基本的なことはすでに決まっています。
指示された実務担当者は、その課題をどのように具現化していくかの手法を考える必要があります。
シチュエーション
君の会社は『トップダウン式経営システム』を取っているから、社長の意見がとても強いよね。
トップダウン?えーと、どういう意味?
わかりやすい意味に変換
君の会社は『上層部に決定権がある経営システム』を取っているから、社長の意見がとても強いよね。
そうなの!だから、社長に嫌われたら居場所がなくなるんだよね・・・。
使い方の解説
「トップダウン」という言葉は、ある意味では便利な言葉になります。
一般的に仕事を円滑に行なうには、その仕事を行なう上で関連する「部署」や「人」との事前の調整が必要です。
しかし、トップダウンという方式での指示には、やるかやらないかの議論や、事前の調整は必要ありません。
上長の誰の指示で、目的が何であるかさえ明確に伝えれば、事はスムーズに進むはずです。
物事の始めが、やるかやらないかを考えるのではなく、すぐに実行するにはどうするかを考えることから始まります。
つまり指示から即実行になり、議論する必要があるのは、実行するためのベストな手段は何かを議論することぐらいです。
「トップダウン」と似ている言葉・間違いやすい言葉
「トップダウン」という言葉を聞くときに、その正確な意味を把握してなくて理解に苦しむ場合がありますね。
ここでは、「トップダウン」と似ている言葉や、間違いやすい言葉の違いを整理して解説したいと思います。
「トップダウン」と相対する言葉として使われているのが、「ボトムアップ」になります。
また混同して使われるのが「ミドルアップダウン・マネジメント」や「ワンマン経営」になります。
これらの言葉の「トップダウン」との違いを、以下で解説しますので頭の中で整理して理解してください。
「トップダウン」と「ボトムアップ」の違い
「トップダウン」も「ボトムアップ」も、最終的な判断は決定権のある上長になります。
「トップダウン」は指示命令が上位職から下位職へと伝えられ、指示者の意志が強く反映されて実行されます。
基本的にはその指示を覆すことはできず、指示された部下は、いかにその業務を遂行するかが任務になります。
したがって「トップダウン」の指示は、その企業にとって常に正しくベストな判断であることが大前提になります。
「ボトムアップ」の違う点は、上長が判断を下す時に、実務担当者の現場の意見や提案を反映させることです。
実務担当者との話合いの中で、上長が納得できる意見や提案があれば、柔軟に取り入れていきます。
現場の意見や提案が取り入れられることで、実行者のモチベーションアップにもつながり、業務効率的にも有効な手段と言えます。
一方では、判断を下すまでに時間を要したり、責任の所在が曖昧になるなどのデメリットも出てきます。
「トップダウン」と「ミドルアップダウン・マネジメント」の違い
「ミドルアップダウン・マネジメント」は、「トップダウン」と「ボトムアップ」を組み合わせる方式になります。
「トップダウン」も「ボトムアップ」もそれぞれメリットとデメリットがあり、それを合わせて運用することで相乗効果を上げるという狙いがあります。
ここでのキーパーソンは中間管理職になります。
経営層の判断を「トップダウン」で部下にわかりやすく説明し、逆に実務担当者の意見や提案を経営層に進言するという役割を担います。
したがって、このような役割ができる中間管理職が育っていない企業では、その効果は期待できません。
「ミドルアップダウン・マネジメント」方式は、近年の企業においては増加傾向になっています。
外的な企業環境への迅速な対応を行なうには、企業内でのスピードある対応力と柔軟な行動力を必要とされているからです。
「トップダウン」と「ワンマン経営」の違い
「ワンマン経営」を一言でいうと、1人の経営者が他の人の意見を聞かずに、1人の判断で企業経営を行なうことです。
経営判断だけではなく、人事異動や人事考課などへの不当介入なども多く見られます。
「ワンマン経営」の企業では、管理職といえども決裁権限が限定されています。
一見したところ即断即決で効率的なイメージがありますが、実際は1人のワンマン経営者に振り回されて、非効率になる場合が多く見られます。
企業の業績が良いときにはそれほど表面にでませんが、業績が悪くなると従業員の抑えられていた不満が一気に噴出してきます。
「トップダウン」の場合は、指示をだす権限がある地位の人には、その権限に見合った判断能力があるという前提があります。
したがってワンマン経営者が行なう判断よりは、「トップダウン」での判断によるリスクは高くありません。
つまり、「ワンマン経営」が成功する条件は、小規模企業で経営者に突出した能力があり、さらにカリスマ性が伴っていなければならないわけですね。
「トップダウン」のメリット・デメリット
以下の解説では、「トップダウン」のメリット・デメリットを箇条書きで紹介し、その後に具体的な説明をしたいと思います。
▽「トップダウン」のメリット
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▽「トップダウン」のデメリット
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「トップダウン」のメリットは、判断の速さと指示伝達スピードの速さです。
絶好のチャンスに判断と初動対応が遅れ、競合他社に先をこされる可能性は低くなります。
そしてやるべきことが明確になり、一度決定したら、企業全体や担当部署が一体感をもって取り組んでいけます。
それは、企業トップの理念が一般従業員まで浸透し、「一度決まったことは、文句を言わずに一生懸命にやる!」という風土があるからです。
逆に最大のデメリットは、重大事項において間違った判断をすると、企業自体の存続が危うくなることです。
基本的に上長の指示に基づいて業務を行なうという姿勢ですから、自ら思考・判断して行動するという意識が低くなります。
したがって、将来の企業を担っていく中間管理職が育ちにくい風土になりがちです。
また、実務担当者からの業務改善提案やバッドニュースが上長に伝わりにくく、企業の活性化がされにくい体質になりがちです。
まとめ
「トップダウン」の意味 | 上意下達 |
「トップダウン」の具体例 | 上長から指示される、上層部に決定権がある |
「トップダウン」と類義語の違い |
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「トップダウン」は、企業に急激な成長を求められる時、企業が危機的な状況にある時、企業に構造的な改革が必要な時には有効な手段になります。
ただし、その時の判断が間違っていると、取り返しのつかない状況に陥るリスクを伴っていることを、認識しておかなければなりません。
したがって、特に重要な経営判断を下す経営層においては、長期的な展望と総合的なバランスのある判断力が求められますね。
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