「退職するときに残業代を請求できるの?」「サービス残業が当たり前だったけど、できることなら残業代を請求したい」など、在職中に支払われなかった分の残業代を退職時に請求したいと考える方は少なくありません。
働いた分の対価は受け取る権利があるため、残業代を請求したいと考えるのはごく自然なことです。
この記事では、「退職時に残業代を請求できるのか」「請求に必要な証拠とその重要性」などについて解説します!
目次
退職するときに残業代の請求はできる?
残業代は、退職前でも退職後でも、どちらのタイミングでも請求することができます。
もし、退職してから「請求するべきだった」と後悔している方でも、諦める必要はありません。
実際に、残業代の請求は退職後に行う人が多い傾向にあります。
それは、在職中に残業代について言い出しづらかったり、周りの目を気にしてしまうのが大きな原因でしょう。
ただ、請求できる残業代は2年前までの分であるため、退職後に請求すると減額されてしまう場合があります。
退職後に請求する予定の方は、なるべく期間を空けないように行動するのがおすすめです。
退職前に残業代を請求するメリット・デメリット
メリット
先ほどもご説明したように、請求できる残業代は2年前の分までです。
もし退職後に請求する場合は、その分請求できる金額が減ることになります。
退職前に請求すれば、過去2年間分の残業代を受け取れる可能性が高まる点がメリットです。
また、残業した証拠になるものが揃っているほど請求がしやすくなります。
その証拠は、第三者から見ても明確なものでなければなりません。
証拠がないと、残業代を支払おうとしない会社もあるため、注意が必要です。
退職前であれば、タイムカードなどの勤務時間記録やパソコンの作業履歴などが確認できるため、残業の証拠を集めやすい点もメリットの一つです。
デメリット
「退職前に残業代を請求するのは勇気がいるな…」と思う方が多いのではないでしょうか。
言い出すのに精神的負担がかかる点が、退職前に請求するデメリットです。
残業代を請求するのは正当な権利であり、支払わない側に問題があります。
しかし、請求したことによって残りの期間の居心地が悪くなったり、嫌な顔をされたりするケースもあります。
普段からサービス残業が当たり前だという会社である場合は、なおさら注意が必要です。
そのような会社は、当然残業代の請求を嫌い、態度を変えたり、支払いを逃れようとする場合もあります。
少しでもトラブルの心配があれば、いざという時のために、やり取りの記録や会話の録音などを残しておきましょう。
退職後に残業代を請求するメリット・デメリット
メリット
退職前に残業代の請求をするのは、周りの目が気になったり、トラブルの心配もあって気が引けますよね。
それに対し、退職後であれば会社のことを気にせず請求できるというメリットがあります。
精神的負担をかけずに残業代の請求がしたい場合は、退職後のほうが行動しやすいでしょう。
また、未払いの残業代がある場合、支払いが遅れたことに対する損害金である「遅延損害金」を請求する権利もあります。
退職前より退職後のほうが利率が高いため、遅延損害金だけでみると、退職後に請求するほうが多く受け取れることになります。
デメリット
残業したという証拠は、自分で用意する必要があります。
退職後に残業代を請求する大きなデメリットは、残業の証拠が十分に集められない可能性があることです。
タイムカードや勤怠の記録などは、退職後に破棄されてしまうケースも少なくありません。
まだ退職前だという場合は、請求するときのために証拠集めをしておきましょう。
また、請求できる残業代の期間は2年前までと決まっています。
そのため、退職後は時間が経てば経つほど受け取れる残業代が減ってしまう点がデメリットです。
より多くの金額を受け取れるよう、退職後すぐに行動すると良いでしょう。
残業代を請求するには証拠が必要!
なぜ証拠が必要なのか
残業代を請求するならば、証明できる材料を自分で集めなければなりません。
そもそも未払いの残業代がある時点で、その会社が証拠なしに残業代の請求を受け入れる可能性は低いでしょう。
会社とのやり取りのみで決着がつかない場合、訴訟を起こして裁判になるケースもあります。
その際、第三者が見ても明らかに残業したという事実が伝わる証拠がなければ、裁判所は請求を認めることができません。
残業したという事実があり、それをどんなに主張したとしても、証明できるものがなければ判断できないのです。
裁判での勝利を左右してしまうほど、残業の証拠は重要であることを頭に入れておきましょう。
残業した証拠として認められるもの
残業した証拠には、下記のようなものが挙げられます。
上記のような証拠は、残業していたという事実を証明できるものです。
加えて、残業代を請求する期間について、金額を計算するための証拠も必要です。
就業規則が確認できる書類や、給与明細が証拠として使用できます。
労働条件通知書や雇用契約書には、時間外労働に関する規定が記載されている場合があるため、契約内容を証明するのに重要です。
以上のように、残業の事実・金額を計算するための証拠・契約内容などが確認できると、より有力な証拠になるでしょう。
証拠がない場合の対処法
既に退職している場合、タイムカードなどは手に入らないため、証拠を集めるのが困難です。
「自分で証拠を集められないから、残業代の請求は無理か…」と思ってしまった方も、まだ希望はあります。
会社は労働基準法により、労働者の就業時間を記録し、それを3年間保管することを義務づけられています。
そのため、退職後でも会社に残業した証拠が残っている可能性が高いです。
証拠集めが困難な場合は、会社に情報開示を求めることができます。
仮に拒否されたとしても、弁護士を通して開示請求をしたり、裁判所に申し立てをするという方法もあります。
その際はトラブル防止のため、手続き全般を弁護士に依頼すると安心です。
トラブルを避けて泣き寝入りするケースも
残業代を請求することで予想されるトラブルを避けるため、泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。
今まで残業代貰えないとか実態ノルマあるとか労働基準法を守ってない会社から受けた扱いに普通に復讐したいけど、証跡集めとかめんどくさすぎるから泣き寝入り
— Sadakick (@Sadakick) February 23, 2021
証拠集めが面倒で、泣き寝入りしてしまうケースもあるようです。
弁護士に相談して任せることも可能なので、労力を使いたくないという方は検討してみてください。
弁護士に相談し、病気の保証、未払いの残業代の支払いなどを会社に突きつけるつもりだと。泣き寝入りだけはしたくない、ただ悔しいのは、あの会話を録音しておけば良かった、と。
これから先輩は修羅の道を行く。
裁判なんて遠い世界のことで、傍聴すらしたことのない私には、とても恐ろしく思える。— ぷぅこ (@pekopoko_pooh) September 3, 2020
十分な証拠があれば、裁判になったとしても有利に戦えます。
残業したという事実があるのに、泣き寝入りすることは避けたいですよね。
会社とトラブルになる可能性が少しでもあるならば、請求する際の会話の録音など、できる限りの対策をしておくと良いでしょう。
退職代行に任せるのもあり
退職前に残業代の請求をしたいけど、言い出しづらいという方は多いことでしょう。
そのような方におすすめなのが、退職代行サービスです。
退職代行のプロが退職者の代理で会社と連絡を取り、退職の申し出や手続きを行うため、精神的負担を減らせることが最大のメリットです。
残業代の請求がしたいという旨も伝えることが可能なので、十分に証拠を集めてから退職代行サービスに任せるという方法もあります。
以下の記事では退職代行サービスについて詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
⇒退職代行サービスの仕組み、流れ、値段、法的な問題などについて
まとめ
退職前でも退職後でも残業代は請求できること、証拠集めが重要であることなどをご説明しました。
最近はサービス残業をしている方が多いため、退職するときになって「残業代は請求できるのかな」と考えるケースもあるのではないでしょうか。
残業代の請求には時効があるため、残業したすべての分を請求するのは困難です。
しかし、第三者から見ても認められる証拠さえ集められれば、より多くの残業代を受け取れる可能性が高まります。
これから請求を考えている方は、まず十分な証拠を集めることから始めてみてください!