「セオリー」という言葉は、政治・経済・社会のあらゆる分野で幅広く使われていています。
幅広く使われる言葉には、それぞれの分野や使う人によって、少し異なった意味合いで使われている場合が多く見られます。
今回は「セオリー」の一般的な意味と、ビジネス社会での「ビジネスセオリー」の意味と使い方を解説します。
また「セオリー」と似ている言葉や、間違いやすい言葉も併せて解説しますので、「セオリー」という言葉の意味を正しく理解し使用してください。
「セオリー」の意味とは?
「セオリー」の元々の語源は、ギリシャ語の「theoría(テオーリア)」で、“真理そのものを観る”という意味でした。
現在の日本で使われている「セオリー」は、英語の「theory」が語源で、日本語としては「定石」「理論」「持論」などと訳されています。
「セオリー」という言葉の最も一般的な使い方は、仕事やスポーツの現場で“セオリー通りにやる”という言い方になりますね。
ここでの「セオリー」という意味は、“何らかの経験値に基づいた適切な方法”と言い換えることができます。
つまり、過去の実践を通じて得られた経験から、その場面での最も適切な対処法を考え実行することを“セオリー通りにやる”と表現しています。
「セオリー」には、一定の人間集団に共通するセオリーと、個人が独自に保有しているセオリーの2つがあります。
一定の人間集団に共通するセオリーには、ビジネスセオリーやスポーツセオリーなどがあります。
いずれのセオリーにも、長年の実践から得た経験値があり、あらゆる場合の対処法が蓄積されています。
これは過去の経験値から、その場面での最もリスクの少ない方法を選択することができると言うことです。
一方、個人のセオリーは日本語で「持論」と言ったほうが、わかりやすいかもしれませんね。
これはあくまでも個人的な考え方であり、他の人が正当と認めた共通の考え方ではありません。
「ビジネスセオリー」の意味とは?
ここでは「セオリー」全体の概念から、ビジネス現場で使われる「ビジネスセオリー」だけに絞って、解説したいと思います。
セオリーの一般的な意味は「定石」「理論」「持論」などですが、ビジネスセオリーとしては“確立された方法”という意味で捉えると、理解しやすいと思います。
もっと詳しく言うと、“行動するとき、実践の積重ねによって考え出された幾つかの適切な方法の中で、最も確立された方法”になりますね。
「ビジネスセオリー」で特に注意すべき点は、企業内には選択肢が幾つもあるため、その選択を誤ると成果が出ないことです。
たとえば、企業内には少なくとも、「企業全体のセオリー」「上司のセオリー」「自分のセオリー」の3つがあります。
会社組織としてこの3つのセオリーが統一されているのが理想ですが、時と場合によっては意見が異なる場合があります。
さらに、社内のセオリーと社外の相手先とのセオリーとで、意見が対立する場合もあります。
そのような場合は、上司と相談の上で、考えられるベストのセオリーを選択するのが賢明です。
また「セオリー」を「常套手段」と勘違いしている人も見られます。
常套手段とは“どんな場合でも決まりきった方法で対処すること”であり、ビジネスにおけるセオリーはそのような単純で楽なものではありません。
ビジネスにおけるセオリーは、常に時代に合わせて改廃し、より完成したものへと質を高め、必要に応じて新たなセオリーを構築していくものです。
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「セオリー」の正しい使い方を例文で解説
ここからは、「セオリー」の正しい使い方を例文付きで解説していきます。
今回は、以下の3つのシチュエーションを想定して、「セオリー」の使い方を紹介していきます。
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①「仮説通り」という意味で使われるセオリー
行動を中長期的に行なう場合には、その場その場で考えながらの行動はしないと思います。
まずは関連する情報を収集し、過去に成功事例があればその要因を調査し、それらを参考にした上で計画を組んで行動します。
つまり、過去の成功と失敗の事例を調査して仮説を立て、それから行動することが成功への近道だということです。
シチュエーション
セオリー?えーと、どういう意味だっけ?
わかりやすい意味に変換
実験はうまくいったよ!まさに、『仮説通り』だったね。
確かにね。ともあれ、うまくいって良かったよ。
使い方の解説
まったく新しい事例でないかぎり、物事には成功や失敗の前例があります。
その前例の成功や失敗の要因を分析して仮説を立て、それを当面のセオリーとします。
つまり、ここで言う「仮説通り」のセオリーとは、“まずは過去の事例から学んで計画を立てよ!”という意味です。
そして、行動の途中で何らかの問題が発生したら、それを克服することで、さらに完成度の高いセオリーへと築き上げてください。
②「方法を確立する」という意味で使われるセオリー
民間企業であればどんな事業であっても、最終的な目標は利益を出すことであり、利益が出ないと事業を継続することはできません。
つまり企業にとって、利益の基盤を構築するには、利益を出す方法を確立することが最重要課題になります。
企業にとって「(利益を出す)方法を確立する」ためのセオリーは、企業全体の財産になり従業員にとっては重要なスキルとなります。
シチュエーション
新規事業を成功させるには『セオリーを確立する』ことが大事だ!
セオリー?この人は何を言っているのだろうか・・・。
わかりやすい意味に変換
新規事業を成功させるには『方法を確立する』ことが大事だ!
私もそう思います。できるだけ早く勝ちパターンを見つけないといけませんね。
使い方の解説
ここで言う「方法を確立する」ということは、“成功パターンを確立せよ!”という意味です。
企業にとっては多くの成功パターンを保持することで、強固な営業基盤を築くことができます。
またビジネスマンにとっても、成功パターンを多く身に付けている人が優秀なビジネスマンと言われます。
現在の成功パターンは今までの諸先輩が築き上げた財産ですが、それは時代の経過とともに陳腐化してきます。
現役のビジネスマンにとっての重要な使命は、現在の成功パターンを時代の流れに沿うように改廃し、新たな成功パターンを構築することです。
③「効果的な方法」という意味で使われるセオリー
企業内には過去の実践から得られた成功するためのパターンが、「セオリー」というノウハウの形で蓄積されています。
そのセオリーは、成功するために効果的な方法と考えていいでしょう。
効果的な方法とは、“短期間で”、“大きな成果を”、“少ない経費で達成する”、ための最善の方法と考えてください。
シチュエーション
質問に対して回答すると、こういうときは~するのが『セオリー』だよ。
セオリーってどんな意味だっけ・・・?
わかりやすい意味に変換
質問に対して回答すると、こういうときは~するのが『効果的な方法』だよ。
なるほど!すごくためになりました!教えてくれてありがとうございます。
使い方の解説
どのような行動をとる場合でも、選択肢が1つだけとは限りません。
その行動を効果的なものにするためには、その状況にあわせたセオリーの選択肢がいくつかあるはずです。
そのセオリーの選択を誤ると、いくらセオリー通りに実施しても成果は出ません。
ここで言う「効果的な方法」のセオリーとは、“成果を上げるための最善策を選択せよ!”という意味です。
「セオリー」と似ている言葉・間違いやすい言葉
「セオリー」という言葉はいろんな言葉に和訳されていますが、抽象的な言葉が多く、頭の中できちんと整理できていない人が多いと思います。
そのため、「セオリー」という言葉を正しく理解していないことにより、曖昧な使い方と聞き方をしている人が見られます。
ここでは、「セオリー」と似ている言葉や間違いやすい言葉を解説しますので、その違いをしっかり認識し、正しく使用してください。
解説する言葉としては、「モットー」「定石・理論・持論」「マニュアル・説明書」などになります。
「セオリー」と「モットー」の違いとは?
「モットー(motto)」はイタリア語を語源とする英語で、騎士の盾や紋章に、「座右の銘」や「信条・信念」などを書いたことから発祥したと言われています。
和訳としては「目標」「指針」「標語」などと訳され、日本でも社会全般やビジネス分野や個人などで幅広く使われています。
たとえば社会的には、「交通標語(motto for safe traffic)」「選挙スローガン(campaign motto)」「校訓(school motto)」などがあります。
ビジネス的には、「社是(company’s motto)」「商売のモットー(business motto)」などになります。
そして個人的には、「座右の銘(personal motto)」と言われるものがありますね。
それでは「セオリー」と「モットー」の違いは何なのでしょうか?
「セオリー」はある場面において、行動すべき幾つかの選択肢の中から、選ぶべき適切な方法と言うことができます。
そしてその選択をした理由として、何らかの理論的に説明できる根拠がないといけません。
一方、「モットー」は日々の行動において心掛けていきたい目標や指針であり、それを標語化したものになります。
したがって一般的な「モットー」は前向きな内容の文言になり、希望的な要素も含まれています。
もう少し端的に言えば、「セオリー」は方法の選択であり、「モットー」は意思の表明であるとも言えますね。
「セオリー」と「定石・理論・持論」の違いとは?
「定石(じょうせき)」は囲碁の世界、「定跡(じょうせき)」は将棋の世界の言葉で、過去の対局から生み出された最善の打ち方という意味です。
“定石(定跡)通りの打ち方”とは、年月を重ねた過去の対局の経験から、いろんな局面での最も有利な手法という意味です。
「理論」とは、客観的な立場からとらえた事実や情報に基づき、何らかの思考を矛盾なく筋道立てて説明したものです。
理論の前提は、特定の見地から考えた個人的な意見ではなく、客観的な見地による思考に基づいたものでなければなりません。
また理論の中で使われている事実や情報に不備があると、その説明の根拠が崩れ、理論そのものが証明できません。
「持論」とは、本人の過去の経験やスキルを拠り所とし、そこから考え出した独自の意見です。
本人は正しいと信じていますが、すべてが正しいとは限らず、時と場合によっては間違っていることも十分にあります。
『私はこう思う!』のであって、他の人に強要するべきことではなく、それを容認するかは聞いた人の判断に委ねられます。
以上3つの言葉の意味から、「セオリー」との違いを解説してみましょう。
「定石(定跡)」を“最善の方法”と考えるならば、「セオリー」という大きな概念の中の1つに入ると思います。
「理論」には、実践することで証明された理論もありますが、まだ実践によって証明されていない理論もあります。
セオリーを実践によって裏付けられた取るべき手段と考えるならば、「理論」のすべてがその条件を満たしているとは言えません。
そして「持論」は、あくまでも個人の主観的な意見であり、“個人のセオリー”にはなりえても、他の人にも共通する「セオリー」とは限りません。
「セオリー」と「マニュアル・説明書」の違いとは?
「マニュアル」と言うと、「○○の取扱説明書」や「接客マニュアル」「苦情マニュアル」などを思い浮かべますね。
ビジネスセオリー的な発想をすると、「セオリー」の中に「マニュアル」が包含されると考えたほうがわかりやすいと思います。
「セオリー」の中の、どんな場合でも誰にでも共通する基本的なセオリー(実践方法)を、標準的に体系化したものをマニュアルと考えてください。
このマニュアルは、すべての場合において、ルールに基づく共通した手法でなければなりません。
しかし「セオリー」の中には、すべての場合が共通ではなく、組織対組織や組織対個人によって異なる手法になる場合もあります。
その違いをもう少し具体的に述べてみましょう。
「マニュアル」は、新入社員などの経験や知識が浅い人のための指針であり、その内容は常識的な安全策になり、その対処法も限定的になります。
一方「マニュアル以外のセオリー」は、一定の経験と知識を重ねた中堅以上の人が、自身の考察と判断で行なう手法になります。
そのため「マニュアル以外のセオリー」は、ほとんどの企業で明文化したものはなく、個人的なビジネススタイルとして存在しています。
基本的に「セオリー」は成功するための手法なのですが、その中でも「マニュアル」は失敗しないための手法と言ってもいいでしょう。
つまり、上司から“セオリー通りにやれ!”と言われた場合は成功を祈るであり、“マニュアル通りにやれ!”の場合は失敗するなよという意味になります。
まとめ
ビズネスマンにとって、何事もセオリー通りに仕事を行なうことが100点満点ではありません。
すべてをセオリー通りの行なうビジネスマンは、平均点ではありえても、優秀なビジネスマンとは言えません。
優秀なビジネスマンは、セオリー通りに行なうことよりも、さらに成果を出せる方法がないかを常に考えて行動しています。
ビジネスマンのスキルの差は、自分の確立したビジネスセオリーを、どれだけ身に付けているかで決まってきます。
企業でも個人でもそうですが、過去の先人が作り上げた遺産だけに頼っていては、自ずと衰退していきますね。
⇒もっとビジネス用語を知りたいという方向けにビジネス用語が学べるおすすめの本5選を紹介しています。
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実験はうまくいったよ!まさに、『セオリー通り』だったね。