目次
1. はじめに――「家庭と仕事の両立」に悩む看護師が増えている
看護師の仕事は社会的使命感も高く、やりがいが大きい一方で、「勤務が不規則」「長時間労働」「突発的な呼び出し」など家庭との両立が難しい職種の代表例といえます。
2024年 日本看護協会「看護職実態調査」によれば、未就学児を持つ女性看護師のうち72.1%が「両立の難しさを感じている」と回答しています。
また、「両立のために転職や働き方の変更を考えたことがある」と答えた人は61.7%にも及びます。
【表1】子育て世代(未就学児あり)の看護師が抱える主な悩み
悩み・困りごと | 割合(%) |
---|---|
夜勤・早出・遅出と育児の両立が難しい | 68.3 |
突発的な欠勤や早退に理解が得られにくい | 54.7 |
保育園の送迎・行事と勤務の調整が困難 | 43.9 |
家族やパートナーの協力が得にくい | 37.5 |
職場での気まずさや肩身の狭さ | 35.1 |
体力・メンタルの限界を感じる | 32.8 |
「夜勤やシフト勤務」「職場の理解」「家庭との調整」が3大悩みです。
2. ママ看護師の「転職」実態――なぜ転職を選ぶのか
子育て中の看護師は、なぜ転職を選ぶのでしょうか?
理由は主に次の通りです。
-
夜勤・シフト勤務が難しい
-
育児休業からの復帰後に働き方を変えたい
-
職場のサポートや理解が得られず精神的に限界
-
保育園や家族の事情で通勤や勤務形態を変えざるを得ない
-
もっと子どもと過ごす時間がほしい
【表2】子育て世代の転職理由(複数回答)
転職理由 | 割合(%) |
---|---|
夜勤・シフト勤務が困難 | 60.9 |
家庭や育児との両立が難しい | 53.2 |
保育園送迎や通勤の負担 | 36.7 |
職場のサポート不足 | 31.4 |
産休・育休復帰後の職場不適応 | 29.8 |
体調やメンタル不調 | 17.1 |
シフトや夜勤負担が転職の最大理由です。
ママ看護師の復職・再就職のリアル
一度退職し、「ブランクを経て復職」するママ看護師も少なくありません。
2024年 全国復職看護師調査では、復職者のうち45.2%が「子どもが未就学児のタイミングで再就職」しています。
【表3】ブランク復帰者の復職時の不安(複数回答)
不安内容 | 割合(%) |
---|---|
家庭と仕事の両立ができるか | 64.9 |
看護技術・医療知識の遅れ | 49.7 |
職場の雰囲気や人間関係への不安 | 42.8 |
子どもの急な病気や行事で休めるか | 38.3 |
ブランクへの偏見・風当たり | 21.5 |
3. 「子育てと両立できる職場」は本当に増えている?
近年、働き方改革や医療業界の人材不足により、「子育て看護師歓迎」「時短勤務」「日勤のみ」などの求人が増加傾向です。
【表4】育児と両立しやすい求人の割合推移(2015~2024年)
年 | 両立しやすい求人割合(%) |
---|---|
2015 | 13.8 |
2018 | 18.9 |
2020 | 22.3 |
2022 | 27.5 |
2024 | 33.2 |
この10年で2倍以上に増加しています。
代表的な両立しやすい職場タイプ
-
クリニック(内科、小児科、眼科、皮膚科、美容など)
-
健診センター・人間ドック
-
デイサービス・デイケア
-
訪問看護ステーション(シフト柔軟なところ)
-
保育園・学校・企業など医療関連職
-
特養・老健など介護施設(日勤専従や時短可のところ)
【表5】ママ看護師の人気職場ランキング(2024年 全国調査)
順位 | 職場タイプ | 人気度(10点満点) |
---|---|---|
1 | クリニック | 9.2 |
2 | 健診センター | 8.7 |
3 | デイサービス・デイケア | 8.2 |
4 | 訪問看護ステーション | 7.9 |
5 | 保育園・学校・企業 | 7.7 |
4. 公式求人票では分からない「本当に両立しやすい職場」の見抜き方
求人票で「子育て看護師歓迎」「日勤のみ」「時短可」と書かれていても、実際は残業・休日出勤・突発呼び出しが多いなど、実態と異なることも。
本当に両立できる職場かどうかを見抜くには、複数の情報源と現場チェックが不可欠です。
【表6】求人票と実態のギャップ体験(複数回答)
ギャップ内容 | 割合(%) |
---|---|
実は残業・休日出勤が多い | 37.5 |
シフトの融通がきかない | 31.7 |
子どもの急病時に休みづらい | 28.9 |
職場の理解が想像以下だった | 24.3 |
「子育て支援」は名ばかりだった | 16.4 |
情報収集のコツ
-
口コミ・SNS・知人の意見を徹底リサーチ
→看護roo!、ナース専科コミュニティ、ナスコミなど口コミサイトやSNSの体験談が参考に。 -
エージェントに「両立重視」を必ず伝え、複数求人を比較
-
面接・見学時に「残業の実態」「急な休みへの理解」「シフトの組み方」「ママ看護師の割合」を質問
-
配属科・配属先の雰囲気まで確認(病棟でも日勤専従・急性期/慢性期/回復期で大きく違う)
【表7】見学・面接でチェックしたい質問例
質問内容 | 目的・ポイント |
---|---|
急な休み・早退時のフォロー体制は? | 実際の理解度・職場の雰囲気を確認 |
時短勤務やシフト希望の通りやすさは? | 子育て看護師への配慮度 |
既にママ看護師がどれくらい在籍? | 実績が多い=両立しやすい証拠 |
家庭行事や学校イベントでの希望休は? | 「希望休・連休」が通りやすいか確認 |
配属先ごとに人間関係・雰囲気の違いは? | 知人や口コミも活用 |
有給取得率・離職率は? | ホワイト職場の大事な目安 |
5. ママ看護師のリアル体験談とデータで分かる両立のコツ
体験談1:「健診センターで生活が激変!子どもと夕食を囲める毎日」(32歳・2児の母)
「総合病院の三交代勤務では子どもとの時間が取れず、毎日罪悪感…。健診センターに転職し、完全日勤・残業ゼロ・土日休みで生活リズムが一変。
今は子どもと夕食を囲む時間や週末の家族旅行も楽しめています!」
体験談2:「時短勤務OKのクリニックで無理なく両立!」(37歳・1児の母)
「保育園の送迎や子どもの発熱で早退することも多いけど、今のクリニックはママ看護師が半数以上。“お互い様”の雰囲気があり、肩身の狭い思いをせずに済みます。」
体験談3:「訪問看護は意外と柔軟。家族との時間を増やせた」(41歳・2児の母)
「最初は訪問看護はハードルが高いと思っていたけど、実は勤務時間も調整しやすい。スタッフ同士で子育ての話ができ、ストレスが少ないです。」
【表8】転職後「子育てと両立できている」と感じる割合と職場別満足度
職場タイプ | 満足度(10点満点) | 「両立できている」割合(%) |
---|---|---|
クリニック | 8.9 | 72.8 |
健診センター | 9.1 | 81.6 |
デイサービス等 | 8.2 | 67.2 |
訪問看護 | 8.5 | 62.4 |
病院(病棟) | 6.3 | 41.7 |
職場選びで両立度・満足度が大きく変わるのが現実です。
6. 給与・待遇・キャリアアップ…両立の裏にあるリアルな課題
「両立できる職場」にはデメリットや悩みもあります。
【表9】ママ看護師が転職後に感じた新たな課題(複数回答)
課題・悩み | 割合(%) |
---|---|
給与・年収が下がった | 64.3 |
キャリアアップの機会が減った | 41.6 |
業務の幅が狭い・ルーチン化 | 29.8 |
人間関係が密になりやすい | 22.4 |
仕事量の変動や急な担当増加 | 18.7 |
夜勤手当やボーナスが減り年収ダウンは覚悟が必要。
また、専門性やキャリアアップ希望者は、職場選びや将来設計をしっかり考えることが大切です。
7. 両立転職を成功させる実践アクションリスト
-
自己分析――「両立で一番大事な条件」は何か?(勤務時間、給与、休み、子の年齢)
-
家庭との役割分担(家族とよく相談・協力体制の確認)
-
求人サイト・エージェント・口コミ・現場見学を複数併用
-
応募・面接では「両立条件」を妥協せず率直に相談
-
職場見学でママ看護師の割合や雰囲気を直接チェック
-
入職後は「助け合い」を意識、困った時は早めに上司・同僚に相談
-
キャリアアップ希望者は「資格取得支援」や「長期的な働き方」も視野に
8. よくあるQ&A
Q. 給与やキャリアを下げずに両立転職はできる?
A. 夜勤手当がない分どうしても収入は減りがちですが、「訪問看護」「規模の大きなクリニック」「大手法人の健診センター」などでは年収400万円以上の例も多数。
また、一時的に勤務をセーブしつつ、子育てが落ち着いたら復帰・キャリア再挑戦という“段階戦略”も有効です。
Q. 子どもの急病時、職場に迷惑をかけるのが不安…
A. ママ看護師の多い職場・職種は「お互い様」「フォロー体制」がしっかりしており、気兼ねせず休める傾向。
面接・見学でスタッフ構成や休み取得率を必ず確認しましょう。
Q. 保育園の送迎・延長対応はどうしている?
A. クリニック・健診・デイなど「18時までに帰れる」職場が人気。
「院内保育」や「提携保育園」ありの求人も増えているので要チェック。
パート勤務・時短正社員も活用されています。
9. まとめ――「自分に合う両立スタイル」を諦めないで
子育てと看護師の両立は、悩みも多いけれど、時代とともに働き方の幅が広がりつつあります。
「自分と家族にとって何が一番大事か」「妥協できること・できないことは何か」をしっかり整理し、
数多くの情報源を活用して、後悔のない転職・職場選びをしてください。
“ママ看護師”として無理せず笑顔で働ける道は必ずあります。
あなただけの両立スタイルを実現できる職場を、納得いくまで探しましょう。

株式会社STORIO 代表取締役 中村彩織【現役転職サイト・転職エージェント】

最新記事 by 株式会社STORIO 代表取締役 中村彩織【現役転職サイト・転職エージェント】 (全て見る)
- 看護師国家資格を活かせる!意外な仕事・新しいキャリア10選 - 2025年6月24日
- 夜勤専従・パート・派遣…働き方から考える看護師の転職戦略 - 2025年6月24日
- 地方・田舎で働きたい看護師必見!地域別おすすめ転職先 - 2025年6月24日