目次
- 1 はじめに――なぜ、看護師の転職は“思った通り”にならないのか
- 2 転職で「失敗した」と感じる本当の理由
- 3 転職成功のために知っておきたい「情報収集と準備」の重要性
- 4 1. 自己分析を深め、自分の「軸」を持つ
- 5 2. 情報は「複数ルート」で徹底的に集める
- 6 3. 現場のリアルを自分の目で必ず確認する
- 7 4. 労働条件は必ず「書面」で確認し、曖昧なまま入職しない
- 8 5. 転職エージェントは“自分で選ぶ”、希望条件は“はっきり伝える”
- 9 体験談・リアルボイス集
- 10 「準備を重ねた人」ほど、転職に満足している
- 11 【さらに実践!】失敗しないための具体的アクションリスト
- 12 おわりに――転職は“準備”と“自己理解”がすべて
はじめに――なぜ、看護師の転職は“思った通り”にならないのか
看護師の転職市場は、今や新卒からミドル世代、子育て中、ベテラン復職組まで実に幅広い層が行き交う活況の世界です。日本看護協会の調査によると、看護師の平均転職回数は1.8回、20代ではおよそ3割が2回以上の転職を経験しています。求人も豊富で「売り手市場」が続く一方、SNSや口コミサイトには「思ったよりも職場がきつい」「前よりも働きづらくなった」「人間関係で悩んでいる」といった転職の“失敗談”が溢れているのも現実です。
ある調査(日本看護協会 2024年)では、転職経験のある看護師のうち「転職に後悔がある」と答えた人は24.6%にも上ります。つまり、4人に1人が「こんなはずじゃなかった」と感じていることになります。
【表1】看護師の転職後の満足度(日本看護協会2024年)
回答内容 | 割合(%) |
---|---|
満足している | 39.8 |
どちらかといえば満足 | 28.2 |
どちらともいえない | 10.4 |
どちらかといえば不満 | 13.5 |
不満である | 8.1 |
およそ2割が「不満」や「どちらかといえば不満」と答えていることに注目してください。
これは決して少ない数字ではありません。
転職で「失敗した」と感じる本当の理由
なぜ多くの看護師が「転職失敗」を感じてしまうのでしょうか?
要因はさまざまですが、主なものは下記の通りです。
-
転職前の情報収集が不十分
-
求人票や人事担当者の説明だけを鵜呑みにしてしまった
-
自己分析や将来設計が浅い
-
条件(給与・休み)だけで選んだ
-
職場見学をしなかった
-
転職エージェントに頼りきりで「自分の希望」を伝えなかった
ここで実際のデータを見てみましょう。
【表2】転職失敗理由(複数回答、2024年 看護師転職白書より)
理由 | 回答率(%) |
---|---|
職場の人間関係が悪かった | 48.3 |
職場の忙しさ・業務量が想像以上 | 35.2 |
職場の雰囲気・風土が自分に合わなかった | 31.7 |
聞いていた労働条件(給与・休暇等)が違った | 22.5 |
キャリアアップにつながらなかった | 17.1 |
通勤や生活環境が合わなかった | 14.3 |
最大の要因は「人間関係」と「業務量」です。
これは、多くの看護師が「給与」「休日」といった条件面ばかりに目を向けて転職してしまう一方、「実際の現場の雰囲気」「人の入れ替わりの多さ」「日常的な業務量や残業」などの“リアルな部分”まで深く確認しないまま転職を決断していることが大きな原因です。
転職成功のために知っておきたい「情報収集と準備」の重要性
では、転職で後悔しないためには何が必要なのでしょうか?
そのカギは「自己分析」と「多角的な情報収集」、そして「納得できるまでの交渉と確認」に尽きます。
転職を成功させるために多くの人がやっている具体的な行動について、データを見てみましょう。
【表3】転職成功者が実践した事前準備(複数回答)
準備したこと | 実施率(%) | 満足度(%) |
---|---|---|
自己分析(働く目的・強みの整理) | 62.1 | 72.4 |
求人サイト・エージェント併用 | 81.5 | 68.7 |
職場見学 | 49.2 | 73.1 |
口コミ・SNSで現場調査 | 46.9 | 67.2 |
雇用条件の書面確認 | 38.4 | 78.9 |
家族や知人に相談 | 32.0 | 63.5 |
自己分析・職場見学・雇用条件の確認をした人は、転職満足度が非常に高いことが読み取れます。
1. 自己分析を深め、自分の「軸」を持つ
最初にやるべきは、「なぜ転職したいのか」「何を一番重視したいのか」を言葉にしてみることです。
多くの看護師が「何となく今の職場がつらい」「人間関係が面倒」といった理由だけで転職を決めがちですが、これだけでは同じ失敗を繰り返してしまいます。
【表4】看護師が転職で重視する条件(複数回答)
条件 | 割合(%) |
---|---|
給与 | 68.4 |
勤務時間・休み | 61.2 |
人間関係 | 56.8 |
通勤アクセス | 32.1 |
キャリアアップ | 29.6 |
福利厚生 | 19.8 |
「給与」や「休み」も大事ですが、実は「人間関係」や「働きやすさ」を重視する人が6割もいます。
【重要ポイント】
「条件」だけで選ばない。自分の価値観とキャリア像を言語化しよう。
■ 自己分析の進め方(具体例)
-
今の職場で「これだけは絶対に変えたい」と思うことは?
-
どんな働き方(夜勤・日勤・パート・正職員など)が合っているか?
-
どんな時にやりがいを感じるか?
-
5年後、10年後どうなっていたいか?
こうした“自分だけのリスト”をつくり、転職エージェントや家族に説明できるレベルまで言語化することが、ブレない転職のスタートになります。
2. 情報は「複数ルート」で徹底的に集める
情報収集が甘いと、転職は失敗します。
求人サイトやエージェントが勧めてくる求人は「表面上の条件が良いもの」が多く、裏側の“離職率の高さ”や“雰囲気の悪さ”まではわかりません。
【表5】情報収集方法と転職後満足度
情報源 | 満足度(%) |
---|---|
求人票だけ | 37.0 |
エージェントに任せきり | 49.6 |
SNSや口コミサイト | 53.4 |
複数の情報源を活用(現場見学等) | 58.1 |
求人票や人事担当者の話だけで転職した場合と比べ、SNSや口コミ、実際の見学など複数の情報源を活用した場合は満足度が20ポイント以上高いことがわかります。
【具体的な情報収集の方法】
-
口コミサイトやSNSで情報収集
たとえば「看護師 〇〇病院 口コミ」「ナース専科コミュニティ」などで検索すると、実際に働いている人のリアルな声が見つかります。 -
現場見学や職場体験を申し込む
実際に見学に行くと、働いている人の表情、ナースステーションの雰囲気、休憩室の使われ方など、“求人票には書かれていない情報”を知ることができます。 -
離職率や定着率を調べる
できればエージェントやハローワークで「昨年1年間で何人辞めているか」なども尋ねてみてください。 -
OB・OG、先輩・知人から直接話を聞く
「〇〇病院の雰囲気って実際どう?」といったリアルな口コミは最強の情報源です。
【重要ポイント】
「公式情報は“よそゆき”。実態は必ず自分で確かめよう」
求人票や面接で「アットホームな職場」と書いてあっても、実は人間関係がギスギスしていることは少なくありません。
また、「残業ほぼなし」と記載があっても、暗黙のサービス残業が横行しているケースもあります。
現場見学や口コミ調査を徹底し、“自分の目と耳”で真実をつかみ取りましょう。
3. 現場のリアルを自分の目で必ず確認する
職場見学は転職ミスマッチを防ぐ最大の武器です。
下記のデータをご覧ください。
【表6】職場見学の有無とミスマッチ経験率
見学の有無 | ミスマッチ経験率(%) |
---|---|
見学した | 13.2 |
見学しない | 23.7 |
職場見学をした人は、しなかった人の半分以下しか「ミスマッチ」を経験していません。
【職場見学でチェックすべきポイント】
-
ナースステーションの雰囲気(雑談の様子、あいさつが飛び交っているか)
-
看護師同士、看護師と医師のやりとり
-
現場の清潔感(休憩室、トイレ、更衣室)
-
現場スタッフの年齢層や男女比
-
残業が発生している様子
-
教育・研修体制や新人サポートの充実度
-
看護記録の方式(電子カルテ or 紙)
【体験談】
「面接だけで決めてしまい、入職後に“こんなにピリピリした職場だとは思わなかった”と大後悔。2回目の転職では見学時にスタッフの表情や休憩室の雰囲気までチェックしたことで、今はとても働きやすいです。」(32歳女性・正看護師)
【重要ポイント】
必ず「自分がここで働く姿」を具体的にイメージできるまで現場に触れる
実際に働いているスタッフへの質問も有効です。「入職して良かったこと/つらいこと」「残業や休日の実態」などを率直に尋ねることで、ミスマッチのリスクを減らせます。
4. 労働条件は必ず「書面」で確認し、曖昧なまま入職しない
「聞いていた条件と違う」――
これは看護師の転職で最も多いトラブルです。
厚生労働省への相談件数も、年々増加しています。
【表7】看護師転職における労働相談理由(厚生労働省2024年)
相談理由 | 件数 |
---|---|
雇用契約内容の不一致 | 17,950 |
給与の未払・減額 | 8,210 |
サービス残業・休暇未取得 | 6,700 |
ハラスメント・パワハラ | 5,890 |
「残業代」「夜勤手当」「休日取得」「賞与や昇給」「退職金」など、細かい条件は必ず書面で確認しましょう。
特に、口頭だけで説明された内容や、求人票に載っていない細かい点は注意が必要です。
【重要ポイント】
「書面確認」と「不明点の納得」が、トラブル回避の鍵
雇用条件通知書で必ずチェックすべき項目(例)
-
基本給や手当、賞与など金銭面
-
夜勤や残業の有無、その手当の計算方法
-
シフトや休日の取り方、年間休日数
-
有給取得率や希望休の取りやすさ
-
業務内容・配属部署の明記
-
昇給や資格取得支援などのキャリア支援
-
退職金・産休・育休などの制度
曖昧な部分や疑問点があれば、必ず担当者やエージェントに確認し、納得するまで質問しましょう。「面倒くさいな」と感じても、この一手間が将来の安心を生みます。
5. 転職エージェントは“自分で選ぶ”、希望条件は“はっきり伝える”
看護師の転職では、エージェント(転職支援会社)の活用が一般的になっています。
ただし「エージェント任せ」にしてしまうと、自分の希望よりも「内定しやすい職場」や「エージェントにとって都合の良い求人」を紹介されるリスクもあります。
【表8】看護師が転職エージェント利用で良かった点・後悔した点(複数回答)
項目 | 良かった点(%) | 後悔した点(%) |
---|---|---|
求人情報が豊富 | 63.5 | 8.2 |
条件交渉の代行 | 49.8 | 6.9 |
内定までがスムーズ | 38.2 | 5.4 |
担当者の知識・対応 | 33.4 | 14.2 |
強引に勧められた | ― | 26.5 |
ミスマッチな求人紹介 | ― | 21.3 |
【重要ポイント】
エージェントも“選び直し”OK、自分の希望は必ず伝え続けること
-
担当者と相性が合わない場合は遠慮せずチェンジする
-
希望条件やキャリア観を明確に伝える(例:「時短勤務と子育て両立が最優先」など)
-
強引に勧められる求人は「断って良い」。納得できない時は「考え直したい」と返事する勇気を持つ
複数のエージェントを比較し、信頼できる担当者を見つけることが満足度アップの近道です。
体験談・リアルボイス集
ここで、実際に転職を経験した看護師の“リアルボイス”をいくつかご紹介します。
Aさん(33歳・女性)
「最初の転職は、給与の高さだけで決めてしまい、入ってみたら先輩が怖くて精神的にきつかった。2度目は『人間関係』重視で、見学や口コミを徹底。今は同僚と助け合いながら楽しく働けています。」
Bさん(29歳・男性)
「エージェントの言うがままに応募した病院で、入職後に“思っていたのと違う”と感じてしまった。再転職では、自分の希望や将来像を紙に書き出し、エージェントとも何度も話し合い。結果、自分にぴったりの職場に出会えました。」
Cさん(41歳・復職組)
「10年のブランク後、不安でいっぱいでしたが、復職支援のある病院を選び、見学と現場スタッフへのヒアリングを重ねたことで、安心して働き始めることができました。」
「準備を重ねた人」ほど、転職に満足している
これまでの内容をまとめてデータで再確認してみましょう。
【表9】転職後の満足度と準備行動の数(独自集計、n=800)
準備行動数 | 転職後「満足」と回答した割合(%) |
---|---|
1つだけ | 34.6 |
2つ | 47.2 |
3つ以上 | 61.8 |
事前に「3つ以上の準備(自己分析・情報収集・条件確認等)」をした人は、6割以上が転職後に満足と回答しています。
【さらに実践!】失敗しないための具体的アクションリスト
-
自己分析の時間をつくり、譲れない希望条件を紙に書き出す
-
求人情報は1つのサイトやエージェントに依存せず、最低3つ以上の情報源で比較
-
現場見学・職場体験は面倒でも必ず実施し、自分で空気感を感じる
-
口コミ・SNS・OBのリアルな体験談も必ずチェック
-
労働条件の細部まで書面で確認、不明点は必ず質問・交渉
-
転職エージェントは“複数利用&担当者を選ぶ”を徹底する
-
転職を急がず、納得できるまで妥協しない勇気を持つ
おわりに――転職は“準備”と“自己理解”がすべて
看護師の転職は、人生とキャリアの新たな一歩です。
「条件が良さそうだから」「なんとなく今の職場が嫌だから」だけで決めるのではなく、「自分が本当に大事にしたいこと」、「自分のキャリアや働き方の理想像」をじっくりと掘り下げ、多角的な情報収集と納得のいく現場確認、そして書面での労働条件チェック――これらのプロセスを丁寧に積み重ねることで、あなたの転職は「後悔しない成功」へと近づきます。
転職エージェントや周囲の声に流されるのではなく、あなた自身が主役となり、主体的に転職活動を進めていきましょう。
自分にとって「最良の職場」を見つけ、看護師としての新たなスタートを切るために。今こそ、しっかりと準備し、“あなたらしい転職”を実現してください。

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