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厚生労働省|種類別医療法人数の年次推移報告書
厚生労働省|種類別医療法人数の年次推移報告書
厚生労働省は、昭和45年から平成30年までの種類別医療法人数の年次推移と、平成30年3月31日現在の都道府県別医療法人数について発表しました。
平成19年4月の第5次医療法改正によって大きく変わって医療法人制度で、医療法人数がどのように変化したのかを見てみましょう。
まずは、医療法人の基本的な形態とその種類について、整理していきます。
1. 医療法人の基本的な形態
医療法人とは、病院や診療所、介護老人保健施設などを開設することを目的に、医療法の規定に基づいて設立される法人のことで、一般の法人と共通する部分もありますが、異なる部分もあります。
また、医療法では、法人の実体による区分によって「財団」と「法人」のどちらかに定めています。
1-1. 財団医療法人
個人や法人が設立に必要な財産を寄付や無償譲渡する形で設立するものを財団医療法人と言い、その寄付や無償譲渡された財産そのものを、法人格の基盤としているものです。
1-2. 社団医療法人
病院または診療所を開設することを目的に、基本的には複数の人から現金や不動産などの出資を受けて設立されるものを社団医療法人と言い、現在は医療法人全体の9割以上が社団法人になっています。
出資者が出資した割合に応じて払戻を請求する権利がある法人を「出資持分のある法人」、払戻を請求する権利がない法人を「出資持分がない法人」と言います。
出資持分があるなしによる違いは、出資者である社員に相続が発生した場合に相続財産になるかならないか、という点です。
出資持分がある法人は相続財産に持分が影響しますが、出資持分がない場合は相続に影響しません。
ですので、医療法人の事業を継承する場合、出資持分がある法人については相続税が発生しますが、出資持分がない法人相続税は発生しないという違いが出てきます。
相続税の支払いで医療法人の資金が減ってしまうと、医療法人を運営していくことができなくなり、地域医療に大きな影響を与えかねません。
そこで、平成19年に医療法が改正され、出資持分がある医療法人を新規に設立することは認められなくなりました。
1-2-1. 出資持分がある医療法人
社団医療法人のなかで、社員の退社に伴って出資持分の払い戻しがある、医療法人の解散によって残余財産の分配がある、などの出資持分についての定めが定款に設けられているものを指します。
しかし、平成19年4月の医療法改正によって、出資持分のある医療法人を新規に設立することができなくなりました。
出資持分がある既存の医療法人については経過措置が取られているので「経過措置型医療法人」と呼ばれており、平成22年に社団医療法人の約93%を占めていましたが、平成30年には社団法人の約74%、約4万の法人が存在しています。
1-2-2. 出資持分がない医療法人
社団医療法人のなかで、出資持分についての定めが定款に設けられていないものを指します。
平成19年の医療法改正によって、現在は出資持分のない医療法人のみ新規設立が認められています。
2. 医療法人の種類
財団医療法人と社団医療法人は、さらに3つの種類に分かれています。
2-1. 特定医療法人
税制特別措置法で規定されている医療の普及や向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与していて、尚且つ公的に運営されていると国税庁長官に承認された特定の医療法人を特定医療法人と呼びます。
財団医療法人、社団医療法人に関わらず承認の対象になりますが、社団法人の場合は出資持分のない医療法人でなければなりません。
承認されるための要件は非常に厳格ですが、承認を受けられると法人税の軽減税率が適用されるなどといった税制上の優遇措置が受けられます。
2-2. 特別医療法人
様々な要件を満たした医療法人で、その収益を医療施設の経営に充てることを目的とすることができる医療法人を特別医療法人と呼びましたが、平成19年4月の医療法の改正によって廃止されています。
社会医療法人へ移行するために経過措置が5年間設けられ、平成24年3月31日に完全に廃止されました。
2-3. 社会医療法人
平成19年4月の医療法の改正によって新たに設けられた、要件を満たして政令によって都道府県知事の認定を受けた医療法人を、社会医療法人と呼びます。
財団医療法人、社団医療法人に関わらず承認の対象になりますが、社団法人の場合は出資持分のない医療法人でなければなりません。
社会医療法人は、利益を追求せず、尚且つ地域の医療計画に基づいて救急医療を確保する事業を行って地域医療の中核となるなど、公益性の高さが要求されるなど、認定のための要件は厳格ですが、認定を受けると、法人税が非課税になったり、固定資産税や都市計画税が非課税になったりするなど、税制上の優遇措置が受けられます。
3. 種類別医療法人数の年次推移
ここからは医療法人の数の推移をみていきますが、やはり平成19年4月の第5次医療法改正によって大きな影響を受けていることがわかります。
3-1. 医療法人
3-1-1. 総数
・医療法人の総数は、昭和45年の2,423法人から平成30年の53,944法人と、37年間で約22倍の数になっています。
・昭和63年から平成元年にかけては、バブルの影響もあってか、一気に2倍以上になるなど、年々増加していた医療法人数ですが、第5次医療法改正のあった平成19年の44,027法人から、平成23年に46,946法人と、この4年間だけは法人数の増加が少なくなっています。
3-1-2. 財団医療法人数
・財団医療法人数は、昭和45年の336法人から平成30年の369法人と、平成20年の406法人を最高値として、この37年間でそれほど大きな増減はありません。
3-1-3. 社団医療法人
・社団医療法人は昭和45年に2,087法人でしたが、平成30年には53,575法人と、37年間で25倍以上に増えています。
・医療法人全体の総数と同じように年々その数は増加していて、昭和63年から平成元年にかけての1年間では2倍以上に増えるなどしていますが、平成19年の43,627法人から平成23年の46,556法人と、この4年間は伸び率が低くなっています。
・社団医療法人のうち出資持分がある法人の数は、昭和45年の2,007法人から平成19年の43,203法人と21倍以上に増えていましたが、平成19年の第5次医療法改正で新規設立が認められなくなったため、これ以降は減少し、平成31年には39,716法人になっています。
・出資持分がない法人は、昭和45年に80法人、平成19年に434法人と、社団法人の中での割合は低かったものの、第5次医療法改正によって出資持分がある社団医療法人の新規設立が認められなくなると一気に増え、平成20年に1,034法人と1年間で2倍以上に、平成30年には13,859法人と、昭和45年から173倍になっています。
3-2. 特定医療法人
・特定医療法人の総数は昭和45年の89法人から平成30年の358法人と、37年間で4倍になっていますが、特定医療法人のなかの財団医療法人数は昭和45年の36法人から平成30年の47法人をそれほど大きな増加はありません。
・それに比べて特定医療法人のなかの社団医療法人は、昭和45年の53法人から平成30年の311法人と大きく増加しています。
3-3. 特別医療法人
・平成10年の医療法改正によって新設された特別医療法人は、平成13年に総数8法人からスタートし、平成20年に総数80法人と、7年間で10倍になりましたが、平成19年の医療法改正によって廃止され、平成25年には0となりました。
3-4. 社会医療法人
・平成19年に行われた医療法改正によって新設された社会医療法人は、平成21年総数36法人からスタートし、平成30年には291法人と、10年間で8倍になっています。