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復興庁|平成 29 年度 復興人材の確保及び運用に関する調査

○はじめに
東日本大震災の被災自治体では、復興に関連した業務を進めるに当たり、マンパワーの確保が課題となっています。
これまで全国の自治体から職員派遣や任期付職員の採用などで人材を確保していました。
しかし、各自治体が厳しい行財政状況であることに加え、他の地域でも大規模な自然災害が発生していることなどから、全国から派遣される職員の数は減少傾向にあります。(平成30年3月1日時点で203人不足)
そこで、復興業務に携わる人材の確保に向けた取組状況のヒアリングを行い、新たな人材確保や今いる人材に引き続き被災地で活躍してもらえる方策の検討を行いました。

 

○被災市町村における人材確保の現状
全国の自治体からの職員派遣は減少し、どの県も被災市町村独自の任期付職員採用で補っている状況です。
被災地が必要としている職種は様々ですが、現在は「土木」・「建築」などのハード事業に加え、 被災者支援などのソフト面の業務への対応が求められ、保育士や看護師、介護支援専門員などが必要とされています。
任期付職員が任期満了を迎えるとますます人材確保が厳しくなりますので、今後も任期付職員を採用していく必要性と、5年の任期を満了する現在就業中の任期付職員が引き続き被災市町村で活躍できるよう環境整備を行う必要があります。

 

○ヒアリング調査
●調査対象
@被災市町村のうち、過去に応援職員が在籍し、平成29年4月1日時点でも引き続き応援職員が在籍している37市町村に依頼し、協力が得られた35市町村
A岩手県、宮城県、福島県の被災3県
B任期付職員の採用・派遣を行っている被災3県以外の自治体から東京都、神奈川県、京都府、兵庫県、大阪府堺市の5自治体
●ヒアリング方法
往訪によるヒアリング又は電話によるヒアリング

 

○結果
@被災市町村の取組
被災市町村においては、人材確保のために様々な取組を行っていますが、ヒアリング調査によって浮かび上がった課題とその取組の方向性は以下の通りです。
●任期付職員の募集情報に係る情報発信の工夫
新たな任期付職員の採用に向けて、ホームページや広報誌などで募集情報を周知していますが、市町村独自の情報発信には限界があります。
そこで、現状利用している復興庁ホームページをもっと活用するべきだと考えます。
また、被災3県の共催により平成29年度に東京と名古屋で行われた「被災地市町村職員合同採用説明会」は非常に手ごたえがありましたので、今後も引き続き開催されることを期待しています。

 

●任期満了予定者等の情報を市町村間で共有する仕組みづくり
他の市町村で任期満了を迎えるが、そのまま復興業務に携わる意向のある職員について、情報提供を求める声がありました。
岩手県では県内での配置調整スキームに取り組んでいますが、今のところどの市町村でも人材が不足しており、活用された実績はありません。
しかし、今後はこのスキームの活用が大いに期待されます。

 

●任期付職員に対する帰省に係る経費の支給
一部の市町村では、遠方から赴任している任期付職員が帰省する際の経費を負担しています。
これは任期付職員のメンタルヘルス対策の一環で行われていますが、自治体によってばらつきがあることがわかりました。
今後は情報を共有し、人材確保のためになる取組として参考にしてもらいたいものです。

 

●任期付職員の給与の取扱い
いずれの市町村においても、学歴や職務経験年数等に応じて給与月額を決めていますが、正規職員の給料表を適用するか、再任用職員の給料表を適用するかで違いがあります。
この違いによって昇級の有無にも違いが出てきてしまうのです。
平成30年3月に任期付運用通知が改正され、「初任給の決定、昇格、昇給については、常勤職員に適用される基準に準じて適切に運用すること」とされました。
市町村におかれては、この通知を参考にしてください。

 

○被災3県の取組
岩手県、宮城県、福島県においては、復興業務に従事する任期付職員を採用し、県の機関に配置するとともに、県内の被災市町村に派遣しています。
平成30年3月1日時点で、岩手県98人、宮城県73人、福島県38人の任期付職員がおり、重要な人材確保スキームの1つとなっています。被災地が必要とする人数が減少傾向にあることもあり、任期付職員全体は減少傾向にありますが、土木職や保健師などの専門職については応募が少なく、特に人材確保が厳しい状況です。

 

人材を確保する取組として、平成27年度から東京都の協力を得て、例年6月頃に東京都庁で被災3県任期付職員採用試験合同説明会を開催するとともに、各県ホームページや首都圏の駅ポスターなど様々な広報媒体を活用しています。
また任期満了の職員について、再度任期付職員として採用したり、正規職員としての採用選考をするなどの取組も行っています。

 

それ以外にも岩手県では、先ほど述べた配置調整スキームや、4年以上勤務した任期付職員の正規職員としての採用、県内内陸市町村からの職員派遣数の目標値設定など、独自の取組を行っています。
宮城県でも被災市町で働く意欲のある県内自治体の退職予定者や元職員の情報を取りまとめ、被災市町に情報提供することで、採用支援を行っています。

 

福島県では、平成32年までの時限的な措置として、条例に定める職員の定数を300人増員し、必要な人員を確保しています。また、特に確保が難しい保健師について、県内外で行われる就職ガイダンスに参加し、採用を支援しています。

 

○任期付職員の採用・派遣を行っている被災3県以外の自治体の取組

 

・東京都
平成24年9月に47人の任期付職員を採用し、任期の更新などで対応してきました。平成29年8月末で全ての職員が任期満了を迎え、うち9人は市町村の任期付職員として採用されています。今後は正規職員の派遣や、被災自治体の任期付職員の採用を支援し、被災地支援を続けます。

 

・神奈川県
平成26年度から本格的な任期付職員の採用・派遣を開始しました。平成29年4月1日時点で115人を派遣しており、平成30年も引き続き136人を派遣予定です。

 

・京都府
平成26年4月に任期付職員の採用・派遣を開始しました。人の入れ替わりはあるものの、4?5人の派遣を継続しており、平成30年も引き続き5人程度派遣予定です。

 

・兵庫県
平成25年1月に任期付職員の採用を開始しました。初年度は30人程度でしたが、その後人数を増やし、3年目からは70?80人規模となっています。
平成29年4月1日時点では76人派遣しており、任期途中での退職希望者の補充のための募集は毎年行なっています。
これまでに5年の任期を満了した職員がおり、その一部は他自治体の任期付職員として引き続き被災地で活躍しています。

 

○おわりに
被災市町村においては、全国の自治体からの職員派遣や任期付職員の採用など、様々な人材確保スキームを活用し、復興業務に関する職員を確保していることがわかりました。
しかし、すでに人材不足の現状や今後も減り続ける可能性があることを考えれば、さらなる努力と課題に取組む必要があります。
今回のヒアリングで浮かび上がった課題をクリアし、今後の復興が着実に進み、さらに加速させていくために、本調査が助けとなれば幸いです。

 

平成 29 年度 復興人材の確保及び運用に関する調査
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat3/material/20180601_manpowerzentai.pdf