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隠された情報を読みといて患者さんと円滑な対話を
毎日の仕事の中で、患者さんと上手くコミュニケーションが取れないと感じることはありませんか?
こちらが心を開いて話そうとしても、患者さんがすべてを話してくれない時がありますよね。
本記事では、患者さんの隠している情報を読み取り、円滑なコミュニケーションを取るにはどのようにすべきかご紹介していきます。
医師に全てを話さない患者
普段の診療で、先生方は運動状況や食生活について患者さんに尋ねますよね。
しかし、その質問に正直に答えてくれる患者さんは果たしてどれ位いるのでしょうか。
米・Middlesex Community CollegeのAndrea G. Levy氏らがアメリカの成人4,510人を対象にオンライン調査を実施しました。
その結果、60~80%の人が臨床医に対して自身の健康上重要な情報の提供に協力的でないことが分かったのです。
60~80%の人ですので、かなり多い数と言えます。
この中でも特に、医師の指示に対して同意や理解が得られていない患者さんは、大事な情報を医師に伝えない傾向があったようです。
少しでも医師に知らされていない患者さんの情報があると、様々な弊害が出てきますよね。
患者さんが臨床医に自分の健康状態や考え方などを知らせることは、良好な医師-患者関係を築くことはもちろん、患者さんのケアに必要な要素を集めることにもなります。
正確な患者さんの情報が得られない場合、医師の決定や指示が有害になってしまうことさえあるのです。
そうは言ってもやはり、患者さんの立場を考慮した結果、医療分野では患者さんは嘘をつくものと長年考えられてきました。
がん患者の場合、鍼・灸や運動療法、マッサージ療法というような通常のがん治療を補う補完代替医療利用を医師に伝えない人が20~77%に上っています。
また、うつ病の患者の場合、薬物嫌悪による抑うつ症状を医師に伝えない人が多いことも報告されています。
しかし、患者さんたちが医師に伝えることを避ける情報の種類や理由は、今まで曖昧だったのです。
そこで今回の研究では、患者さんが医師に伝えることを避ける薬物使用、意見の違い、健康行動、指示への理解が出来ていないことなどを含めた7種類の情報と、恥ずかしさなど、何らかの事情で告知をしなかった理由について、アンケートを行っています。
2015年3月にAmazon's Mechanical Turk(Mturk)、同年11月にSurvey Sampling International (SSI)を用いて、オンライン調査を実施しました。
そのうち有効回答が得られたMturk群2,011人とSSI群2,499人の計4,510人のデータを解析した結果が以下の通りです。
参加者の平均年齢は、MTurk群が36±12.4歳、SSI群が61±7.59歳。
どちらの群も白人が80%前後を占めています。
このような条件の下で「1種類以上の情報を医師に伝えなかったことがある」と回答した割合はどうなったでしょうか。
結果はMTurk群が81.1%(1,630人)、SSI群が61.4%(1,535人)というものでした。種類別に見てみると「医師の指示に同意していない」(MTurk群45.7%、SSI群31.4%)「医師の指示を理解していない」(同31.8%、24.3%)が多かったようです。
医師に情報を伝えなかった理由
医師に情報を伝えなかった理由としては、「賢明な選択をしない人だという烙印を押されたくない」や「説教されたくない」が最も多く挙がりました〔MTurk群:81.8%(95%CI 79.8%~83.9%)、SSI群:64.1%(同 61.5%~66.7%)〕。
その次に「自分の行動が有害性だと言われたくない」〔同75.7%(同73.5%~78.0%)、61.1%(同58.5%~63.8%)〕や「恥ずかしい」〔同60.9%(同58.9%~62.9%)、49.9%(同47.8%~52.1%)〕が挙がっています。
どちらの群でも、健康状態が悪いと回答した人や女性、若年者は1種類以上の情報を医師に伝えない傾向が強く見られたようです。
自分が病院へ行った時の気持ちを考えれば分かるかもしれませんが、患者さんは不安を抱えていますし緊張もしています。
様々なことを考えた結果、医師にとって必要な情報を言えなくなってしまうことを理解してあげると良いですね。
隠された情報を読みといて円滑なコミュニケーションをとるには
患者さんの多くが、何かしらの情報を隠してしまっていることが分かりましたね。
円滑なコミュニケーションのためにも、診療を正しい方向性で進めていくためにも、患者さんに隠された情報を引き出す必要があります。
上手くいかない医師-患者の関係はどのようにして打破すれば良いのでしょうか。
それには、双方向のコミュニケーションがポイントとなります。
Levy氏らは、「今回の調査では多くの回答者が、医師の指示に理解や同意ができない時、重要な健康関連の情報を医師に伝えることを避けていた。このような情報を共有し、患者の癒しを促進する方法は何かをより深く考えることで、医師と患者の関係や患者のケアを改善できるはずである。」と結論付けているのです。
同氏らはまた、「患者が食事内容や服薬に関する情報を医師に伝えないでいる場合、特に慢性疾患の場合では健康に深刻な影響を及ぼす危険性が考えられる。」と指摘しています。
また共著者で米・University of UtahのAngela Fagerlin氏は、患者さんと個別インタビューを行った経験を踏まえ、以下のように考察を述べています。
「医療者のコミュニケーション方法によっては、患者が話すのを躊躇ってしまうこともある。そのため、双方向的なコミュニケーションを心がけるべきである。」
お互いの感情や意思を伝え合う
それでは、ここで言う「双方向のコミュニケーション」とは何でしょうか。
その名前の通り、双方向のコミュケーションとは、お互いの感情や意思を伝え合うことです。
「働きかけること」と「受け止めること」の両方が、ほどよいバランスで交替した時に、成り立ちます。
「働きかけること」または「受け止めること」のどちらかが偏ってしまう場合は、会話の一方通行が起こってしまうわけです。
そして、もう1つのポイントであるのが、「創造的なコミュニケーション」であることです。
創造的にというのは、マニュアルや指示に従ったやり方ではなく、自分なりに工夫・努力をしながら柔軟に行うということです。
自分の経験や知識を上手に生かし、ものごとに柔軟に対応して行けば良いでしょう。
人はそれぞれ違いますし、同じ人であっても、その折々で状況が変化する生き物ですよね。
その上でコミュニケーションは型にはまったものではなく、創造的にならざるをえないと言えます。
今までコミュニケーションの取り方を説明してきましたが、具体的にはどうしたら良いのでしょうか。
まずは、患者の考えや行動を認めて支持すると良いでしょう。
例としては、以下のような状況が考えられます。
患者:間食しないようにしていますが、なかなか体重が減りません。
医師:間食を我慢するのはとても大切ですよね。よく頑張っていますね。体重
が増えなくなりましたね。
次に患者の立場に立って理解するように努めることが大事になります。
患者:私は癌なのではないかと心配で。
医師:そうですか。癌が心配なのですね。
患者:ええ、こんなにどんどん悪くなるのは癌以外に考えられないと思います。
医師:なるほど、確かに経過が長くなっていますから、そのようにお感じになるのも無理ないでしょうね。
実際、このように医師に言われると、「自分の話を聞いてもらえる」「肯定してもらえる」と思う患者さんは多いでしょう。
最後に、自分では双方向のコミュニケーションを行っていると思っていても、そうでない場合があることを忘れないでください。
常に、患者さんがどのような反応をしているか、一方的になってしまっていないかに気を配ってください。
まとめ
今回は、患者さんの多くが何かしらの情報を医師に伝えないでいる現状と、それを打破する方法について詳しくご紹介しました。
大切なのは、双方向のコミュニケーションを心がける事です。
患者さん1人1人に合わせ、それぞれ適切に接していくことで、少しずつ患者さんが心を開いてくれるでしょう。
自分なりのコミュニケーションの取り方を模索し、患者さんと円滑で雰囲気の良いコミュニケーションを取れるようにしてみてください。